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Architectural Design Division
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建築ができるまで
STORY
-山あいに佇む 5,500石の”獺祭”倉庫-
旭酒造株式会社は世界的に名の知れた日本酒「獺祭」の製造元です。本社蔵に近接した岩国市の山あいに、約5,500石(1石=180L)の製品を-10℃の温度で貯蔵可能な冷蔵倉庫を計画しました。原料米の保管に適した温度でも運用可能とするために防熱検証に基づいた設計をしています。「獺祭」のより適切な品質管理と出荷対応に寄与する建物が求められました。
プロジェクトメンバー
大嶽 伸意匠設計 入社5年目
川村 将文構造設計 入社10年目
01.周囲の環境と調和した外観デザイン
敷地形状を最大限に活用した無駄のない建物形状としつつ、利用者の使い勝手のよい効率的な作業動線を実現するプランとなるようにこだわりました。
外観は緑豊かな周囲と調和しつつ、伝統的な酒蔵を踏襲した切妻屋根が印象的なデザインとしました。黒を基調とした外観色が周囲の緑との調和を高め、切妻屋根が周囲へのボリュームを抑えています。また雁行する屋根の周囲に鼻隠しを連続して回すことで、一体感のある印象を目指しました。
トラックヤード部分では、大型ウイング車から製品の搬出入をします。大庇は柱を落としたり、吊り構造としたりせず、切妻屋根と一体の片持ち庇とすることにこだわりました。梁せいを抑え、先端を絞ることで、搬入車両の軌跡や有効高さを確保しつつ、一体感のある外観とすることができました。
当初、必要貯蔵量から2階建てを想定していましたが、敷地形状に沿った平面形状とすることで、貯蔵量を確保しつつ平屋建てとすることができました。その結果、縦動線が不要となり、作業効率の高い動線計画となりました。
02.エビデンスに基づく最適解の実現
設計における諸条件はお客様の他施設を参考としつつも、今回計画においてはその条件が最適であるとは限らないと考え、建物規模、外観色、パレット間隔、作業用通路幅、断熱パネル厚、断熱納まりなどの様々な条件を再度問い直し、最適解を探りました。
例えば、最適なパレット間隔、庫内の通路幅などお客様の協力を得て再度検証し、諸条件を再設定し、その結果として、無駄のない平面形状を実現し、平屋建てで最大貯蔵量5,500石(1石=180L)を実現することができました。
貯蔵量の増減に対応できるように、倉庫をA・B・Cの3つのエリアに分割できる計画としました。また、製品を貯蔵しないエリアについては、庫内温度を上げた運用を想定して防熱検討を実施しました。未使用エリアの空調負荷を低減することができたため、省エネに繋がったと考えています。
今回計画では季節毎に変化する庫内温度に柔軟に対応できるようにするため、各エリアの部位毎(天井・壁・床)に防熱計算をし、断熱厚さと結露対策を検証しました。検証の結果、結露リスクが高い部位については、断熱材を厚くしたり、除湿器を計画したりしました。
並行して「断熱厚さ」と「冷凍機の消費電力量」の相関を検証をしました。検証結果をもとに部分的に厚い断熱材を採用することで、消費電力量を低減しランニングコストを抑えることができました。厚い断熱材を採用することは結露対策にも繋がるため、品質とコストを両立することが達成されたと考えています。
基本設計の段階から設備課・生産設計課・FL課・技術課と協議を重ねて計画をすすめました。例えば、BIM上で敷地の高低差を見える化し、腰壁防水範囲の検討や漏水リスクの共有を関係部署間ですることができました。
03.プロジェクトを通して
提示された諸条件や既存図の情報を鵜呑みにせず、再度問い直してみることを大切にしました。
既存からの変更を提案する時は、十分に検証をし、お客様に納得してもらえるまで説明をすることを心掛けました。その結果として、周囲の環境と調和し、使い勝手の良さにこだわった冷蔵倉庫が実現できたと考えています。
計画の最適解を意匠設計と共に理解して、架構や大梁の他、断熱パネルと床の納まりについて構造からの提案を行いました。構造の与条件と合わせて計画を進めることで、構造体の合理化を最大限に図るとともに、意匠性に配慮した構造計画を立案できたと感じています。
今後の設計でも意匠設計、設備設計のコミュニケーションを積極的に行い、相乗効果が生まれるような構造計画を行っていきたいと思います。